エフェメラ

エフェメラとは、包装紙やパンフレットなど、本とは異なる目的の「消えてしまう前提」での紙作品。カゲロウという意味だそうで、そのはかない存在を、愛おしく表現してくれている、と感じていて大好きな言葉だ。
紙袋や箱、紙ナプキン、包装紙。
わたしはそんなものが大好きで、それがきっとグラフィックデザインの世界への扉だったのだろう。
イラストレーション科を卒業して、グラフィックデザイナーとして広告代理店の制作室にアルバイトで入り、不動産物件の全5段(新聞)がレギュラーだった。撮影にも行けないし、日々の楽しみはランチタイムのインベーダーゲームだった(タイトーという会社の、喫茶店などで100円投入するもの)。
そんな時、社内でコピーライターの仕事を知る。そしてその道に足の向きを変えた。
中野とき江さんのアシスタントを経て、フリーランスになり、35歳で創立した会社は今月で24期目に入った。
インターネットの発達によって、グラフィックはWebにおされ気味であり、料金表は大きく変わった。衰退という言葉を受け入れないのは、混んできて一歩ずつの協力が必要な満員電車の中でガンとして動かない人みたいで、ちょっとイタい。人類の進歩と発展は喜ばしく、後ろから押されたら健やかに一歩、前に出るべきなのだ。
そんな日々の中、昨日凸版印刷さんの印刷博物館へ足を運んだ。世界のブックデザイン展を拝見するのが目的だったが、キンダーブック展も開催中で、ほのぼのとしたり、活版印刷体験でグリーティングカードも作らせてもらった。

世界のブックデザイン展。
これはほんとに感動した。素晴らしいアイデア、美しいフォルムや色、素材。作者はもちろん、本作りに関わる人たち全員のソントク抜きの心が一冊になっている様は、わたしに勇気と未来をくれた。

1コーナーでは、凸版印刷さんのプロの仕事ぶりも拝見できる。例えば水中写真家・鍵井靖章氏の写真集。ページを繰るとリアルな自然の美しさにびっくりする。ハイライトの調節にこだわった、4色分解の凄い技術。印刷は芸術だ。すぐできるネットでの情報収集に甘んじ、世の中を知った気でいたら、絶対だめだ。本には未知の世界との出会いがある。

#世界のブックデザイン展