紙の月ホテル1204号室

薄眼を開けて枕元の携帯電話を見る。6:07。
(まだ眠れる)
すぐに電話を伏せ、目を閉じた。画面の光が眼球を目覚めさせてしまったらもう眠りに戻ることはできない。
ショートスリーパーなので、7時間続けて眠る事は無理だと医師に告げた。
「眠れます。睡眠は習慣ですから」
習慣。習慣。
どんな事があっても、死ぬまで生きるのだから、健康で笑っていたい。眠ってみよう。もう少し。
目を閉じて、ワタルとの会話を想う。
「僕がいる」
「帰ってくるの?」
「そうしたい」
「離婚するの?」
「そうしたい」
「できるの?」
「そうしたい」
ワタルは「そうしたい」で生きてる。わたしの家を出た時も、(いつのまにか)結婚した時も、「そうした(い)」かったのだろう。
わたしはワタルとまた一緒にいたいのだろうか。
考えているうちにいつにまにか眠った。目覚めたのは8:30だった。
※この物語はフィクションです。