2016年初夢
効きすぎの冷房が寒い。DJブースを見上げるように床に座っていた私たちは、立ち上がって売店へ向かった。「寒過ぎだよねー」。腕をさすりながら売店へ向かう。そこにはスリムな黒人とふくよかな白人、二人の中年女性が働いていた。カウンターしかないことを除けば、まるで「バグダッドカフェ」のようだ。
かつてオリンピックで賑わったジョージア州アトランタ。そしてここは街はずれにあるプロペラ機の飛行場。ゆえにとても小さい。ニューヨークで自由の女神を旋回するヘリコプターに乗る時と同じレベルの、もしくは石垣島の飛行場のような、誰かの家のようなエアポートである。
金属探知機ゲートと売店とDJブースがひとつ屋根の下にある。私たちは搭乗までの時間を、DJの近くで過ごしていたのだ。聞き覚えのあるカントリーが嬉しくて。
「温かいコーヒーを飲もうよ」「ジョージアでジョージアコーヒー!」「あはは!ここで言う以外許されないユルさだね!」
カウンター越しに「ホットコーヒーをふたつ」と頼む。ブレンダ(バグダッドカフェの黒人女将名)は、無愛想に答えた。「ひとつしかないよ」。
「週末で豆屋が来なくてさ、悪いね」
仕方がない。ひとつで大丈夫、とコーヒーを頼む。冷えた身体には一杯のコーヒーもありがたい。
「ジョージアでコーヒーがなかったという土産話は結構いいんじゃない?」「確かに!」
冷えた腕をさすりながら軽口を叩いていると、すぐにコーヒーは出来上がった。5ドル。ありがとう、とチップカップにクォーターをいれ、カップを受け取ろうとしたその時、なんと私はうっかりカップを倒してしまった。しかも、ブレンダのほうに向かって。
ブレンダは「なにやってんの!」と瞬間的に怒鳴った。
「ああああ、ごめんなさい!」
私はブレンダにもだが、冷えた身体の友人にも申しわけなく、気持ちがドン!と落ちた。「あんたらが寒い?関係ないね!私は掃除!しなくていい掃除!」。こぼれたコーヒーを拭きながらブレンダの罵声は続いている。ヤスミン(バクダットカフェの白人女性名)がたしなめてくれている。私はごめんなさい、ともう一度言い、目のあったヤスミンにありがとうと言いながらチップカップにもう一枚クォーターを入れた。そしてその場を離れた。
「ごめんね、冷え…大丈夫?」「大丈夫、大丈夫!」「ねぇ、一回外に出ようか?」
私たちはドアを開けて外に出た。広がる空。外気は温泉のように、冷えた私たちを温めてくれた。
太陽を浴びながら、遠い日を思う。買ったばかりのアイスクリームを落とした子どもを「なにやってんの!」と叱るヨソの親を見てとても悲しかった。いま一番悲しいのはこの子だから、お母さんお願い怒らないであげて。そんなあの日。
*
初夢である。忘れないうちに書いてみた。場所がジョージアだったのはグルジアから名前をジョージアに変えたほうのジョージア・コラボをやっていたからだろう。ひとつしかないコーヒーをこぼす私、そして…?そんなあたりに何かを感じる夢だった。一緒にいたのはもうひとりの自分で誰でもないと思う。面白い。夢は謎に満ちている。
思えば寝る前にすてきな男の子と食事の約束をしたと思う。もしかしたらあれも夢?これをアップしたら、メールを見返してみよう。
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