男たちの「少年の庭」②土岐康さん

少年だった男たちの観劇後の言葉。いくつになっても心に緑の庭を持つ皆さん。

「劇団5959(ランドリー)第8回公演「少年の庭」を中野は劇場HOPEに観に行きました。
うまくは言えないけれど、観た後少しばかり、こんがらがった糸のようなものが心に残る舞台でした。ただそれは決して後味が悪いものではなく、丁寧に解いていくにつれ、芝居のモチーフについて、明るい方向に、ポジティブに考える余地を残すようなものでした。
予備知識、全く無しにこの物語を、はじめはカズオ・イシグロが書いた「わたしを離さないで」(映画にもなりました)のようなディストピアを背景にしているのか、とも思いました。が、物語が進むにつれ、物事の白黒や善悪を声高くに主張するのではなく、価値観が混沌する今の世の中で、その有り様を「教育」という形を借りて、それぞれの登場人物や逸話に反映させたものだと、強く感じました。
作者の春陽漁介さんは、この舞台で「共同体感覚」を描いたと仰っています。この芝居には、幾つかの繋がりによる「共同体」が登場します。そのどれもが理想と現実に苦しみ、崩壊し再生していきます。ただしそのどちらがよいわるい、ということを、春陽さんは示していません。この独特な「性善説」(といったらいいのかな)を物語に色濃く打ち出す春陽さんのストーリーテリングが、わたしは好きです。それは先日観た「トラッシュ」(BP計画)と同様で、観客が色々な感想や感情移入を持ったとしても、そのいずれもが肯定されるであろう結末を迎えるからです。
それは芝居を観た全ての人を、ある意味必ずハッピーエンドにさせる「春陽マジック」というべきもの、このマジックを次回作も期待します。」
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